イギリスでも、黙っていられません

海外駐在妻の、世界へ向けたひとりごと

イギリスロックダウン振り返りと、ブログの今後について

 


いよいよ私の2年間のイギリス生活も、終盤を迎えています。

そこで、これまでのロックダウンおよそ3か月間にやったことを一度振り返ります。

 

私はこのロックダウン期間を、自分なりに豊かな時間にできたと感じています。

2019年の冬から今年の夏にかけては、多くの方が亡くなり、本当に不安で悲しく恐ろしい期間ですが、それでも、この期間は私にとって、私がイギリスという土地で生きた、私の人生の「なんびゃくぶんのいち」を占める貴重な時間です。

かけがえのない、私にしか作れなかった大切な時間だと信じています。

 

 

まずは、私がロックダウン中のイギリスでやってきたことを振り返ります。

 

 

ロックダウン中のイギリスでやったこと

 

やったこと1:家でできるオンラインの英語学習

 

無料でできる英語教材などを見つけることができた。

「英語を学ぶ」というだけでなく、「英語で学ぶ」という環境があったことも非常にうれしかった。アフリカのインクルーシブ教育を学んだときは、各国で教育関連の仕事や大学に携わる人とディスカッションをできたのが非常によかった。

 

※詳細はこの記事に書きました。

 

norevocationnoyo.hatenablog.com

 

 

彼らの経験や、すでにある教育資源の現状を知ることができたし、自分の考えを文章にして提出し、ほかの仲間に採点や添削をしてもらえるのも良い機会だった。

オンラインは個人的な学習、という印象があったが、思いのほかいろんな人から賛同の声や質問をもらい、「双方間のコミュニケーション」で成り立っている学びだと実感した。

 

 

シェイクスピアの作品を英語で読み、訳者さんや世界各国の人たちの感じ方や考え方を学ぶ講座も印象深かった。

イギリスの古典をこうしてたくさんの国の人たちが共有し、登場人物に共感したり異論を持ったり、作品の展開の好き嫌いを発表し、ディスカッションが始まった。

シェイクスピアが作った新語の中でお気に入りのものを紹介し合ったり、自分の国バージョンのロミオとジュリエットの話を発表したり…

1年半前、シェイクスピアの生家ストラッドフォードアポンエイボンに訪れたときは、「ふーん、ああ、そう」という他人事で終わっていたが、今はシェイクスピアに親近感をもっている。

グローブ座で野外劇を観たかったな…という残念な気持ちが残るが、この気持ちを大切に、今後もシェイクスピアの作品を楽しむ時間を作っていけたらと思う。

 

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イギリスでテントウムシはlady bird と言いますが、これはシェイクスピアが命名したのだとか。

 

 

 

やったこと2:オンラインで欧米のミュージカル鑑賞

 

 

ミュージカルはもともと嫌いじゃないけれど、英語で観ることにはやっぱり抵抗があった。

自分の英語力では理解できない→感動も半減→私がロンドンに観に行ってももったいない、という思いが先行していた。

しかし、ロックダウン中に無料公開された『オペラ座の怪人』『CATS』『love never dies』などは、字幕がついていたし疲れたら停めて1度休憩を入れながら、じっくりと鑑賞することができた。そして、詳しく観たいシーンをもう一度観たりした。

英語が分からなくても、画像が荒くても、ミュージカルの役者さんのしなやかな体つきや動き、そして美しい歌声に圧倒され、すごくすごく心に染みた。

ロックダウン中で心細かったから、役者さんの堂々とした姿勢、そして一人で歌い上げる力強さに希望をもらった。

 

動画配信者が、いい時期にいい演目を選んで配信してくれたのも一因だと思う。

4月は死者の数がどんどん増えて心細かったので、『オペラ座の怪人』のファントムの孤独に感情移入し、早くまたオペラ座でみんなが集まれるといいなと思った。

5月は先の見通しが少しずつ見えてきて、『サウンドオブミュージカル』の歌声が希望に見えた。

Blacklivesmatter の運動が加速し6月には、『ヘアスプレー』を観て、複雑な気持ちになった。

ミュージカルに詳しくない私でも、こんなに感じるものがあるのだ、ということに気づき驚いた。

もしロックダウンが起きなかったら、この気持ちに気づかずに過ごしていたことと思う。

 

やったこと3:ニュースで英国の文化に触れる

 

ロックダウン以前は英語を敬遠して、日本語でイギリスの情報をあさることが多かった。

しかし、ロックダウンの少し前からBBCのニュースを観たり、ガーディアンなどの記事を読んだり、と、英語で情報収集をするようになった。

YOUTUBEでフラワーショーや英国王室の公式パレード、女王のスピーチを聴いたりする機会も増えた。

これは、生きた学びの時間となった。
自分がイギリスの法律の中で生きていることを実感し、緊張感をもって情報を集める姿勢となったし、いちはやく正確に情報を得ていかねばと痛感した。

それとともに、英国の文化への関心も高まった。
NHSで働いてくださる方たちやエッセンシャルワーカーの実情、ホームレスの方たちがロックダウン中どのようにしているか、政府と国民の関係などを意識するようになった。

フラワーショーに携わるガーデナーの解説を聴いて関連する花の名前やイギリスの歴史を詳しく探ってみたり、内容をじっくりと鑑賞する機会が持てた。

イギリスの有名企業が新型コロナやblacklivesmatter にどのように向き合い、どんな意見を発信しているのか感じることができ、親しみを持ったりますますその企業のファンになったりした。

ロックダウンが始まる前は「お客様」気分で呑気に過ごしていて、EU離脱についても他人事のように感じていたことを痛感した。

 

やったこと4:イギリスらしい料理・お菓子作り

 

3-4月は卵が足りず、5月は小麦粉が店から消え…と、品不足を招いていたが、そんな中でも工夫しながら、下手ながらも自分でご飯を一から作り、技術を磨くというのは非常に面白いことだった。

 

 

これまでは珍しい調味料やハーブ、調理に時間のかかる根菜たちを敬遠していたが、ロックダウンによるおうち時間で、いろんな食材の魅力を再確認し、イギリスの料理を愛しく感じられるようになった。

 

ハーブやスパイスの効能を調べて健康のために活用するのは、まるで自分が魔女になったような気分でワクワクした。

チャイやアロマについても夫婦で少しずつ学びを共有し、豊かな時間となった。

 

かつて茹でて食べたら香りと触感が苦手となったパースニップ(白にんじん)や、セルリアリック(セロリの根っこ?)、スウェード(西洋カブ)などは、スープにしたりローストするとおいしいことを発見し、楽しく味わえるようになった。

スコッチブロスやコーニッシュパスティ、コテージパイなども家で自分で作ってみると、まるで18世紀のイギリス人になったようでまた味わい深かった。

 

 

norevocationnoyo.hatenablog.com

 

 

 

お菓子は、道具が全くないのであきらめていたのだが、代用品を駆使すればほとんどなんでもできるのだと気づいた。

麺棒がなければ、サランラップの芯にラップを巻いて代用。
スケールがないのなら、計量カップや計量スプーンを使って小麦粉や砂糖を計ればいい。
クッキー型がないのなら、缶詰の缶を使って丸い型にする。
パウンドケーキの型は、取手が外せるフライパンにオーブンシートを敷いて、小麦粉とバターをふるって。

調べてもわからないことは友人に質問したり、おすすめのレシピを教えてもらったりと、非常に贅沢な時間でもあった。

正しい材料がそろわないときは、代用品でどのように食感が変わるのかなど、実験のようにして楽しんだ。

薄力粉がなれければ中力粉、片栗粉(potato starch)がなければコーンスターチ、アーモンドブールではなくマジパンで…と、素材の違いを楽しんでみた。

驚いたのは、粉糖でプリンのカラメルが作れないということ。コーンスターチなどが入っているために、キャラメル化せずに白い砂糖と化してしまう。

 

お菓子を作るために試行錯誤し、オーブンで焼けるまで待つ時間は非常に豊かな気持ちになった。

もちろん、仲間でワイワイと作ってみんなで食べる料理教室も大好き。
でも、こうして一人でもなんとか作り上げた経験は、きっと将来に生きてくれるだろうなと思う。

 

やったこと5:パッチワーク(&マスク作り)

 

かつてパッチワークを習っていた。とても素敵な先生と、素晴らしい技術を持った個性あふれる生徒さんたちに囲まれて非常に楽しかった。

 

※過去の記事です

 

norevocationnoyo.hatenablog.com

 

 

そのときの記憶をもとに、私はロックダウン中に端切れを使ってパッチワークをした。

ロックダウンの不安にあらがうように布と針に向き合った時間は、イギリスに来て間もない頃の心細い気持ちを思い出させた。

あのときのグジグジとした気持ちを、また繰り返したくないなと思ったし、自分にできることを増やしたいなと思った。

そこで、古着と使用済みタイツを使ってマスクを7枚作り、かつてパッチワーク教室で先生に教えてもらったパターンをいくつか作ってみた。

かつて分けてもらったかわいらしい布たちがつなぎ合わさってさらにときめく1枚の布になった。

ロックダウンが緩和され落ち着いた今、古参の生徒さんに久しぶりに連絡をとって作品の写真をみてもらった。彼女いわく「私も同じ布を教室で分けてもらったので、なんだか親近感があります」と。

ロックダウン中の個人的な手芸活動が、こうして仲間の作品とリンクして、温かな交流を生み出していることに驚いた。

 

 

 

ロックダウンの反省点

 

個人的には非常に豊かな時間を持てた3か月、と自負しているが、残念ながら後悔していること・力不足だったこともある。

 

 

後悔していること1:地域に貢献できてない

 

せっかくイギリスに来て住ませてもらったので、地域に貢献できることがしたかった。チャリティーショップや教会を通じたボランティアなど。マスクや防護服の作成など、できるお手伝いはあったのかもしれないが、そこまで手が回らなかった。

せめて、チャリティーショップが再開したら、まだ使える服やステーショナリーなどをドネーションしようと思う。

現在ドネーションの募集を中止しているチャリティーショップも多いけれど、私の近所ではすでにドネーションの募集を再開しているお店も。

「受け取る側に配慮して、綺麗に消毒をすること。あなたのお友達が喜んで購入してくれそうなもののみ、寄付してください」とHPに書いてあった。

納税者は寄付をすることで控除対象になることもあるとのこと。(お店の方に聞いただけなので、詳細は分かりませんが…)

 

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「この紫のビンの中に寄付するものを入れてね」と言われた。すでにいっぱい。

 

後悔していること2:大切な人たちに心を閉ざし気味だった

 

海外にいるために、日本の友人たちから心配してもらうことが多かった。

しかし、3月はまだアジア人が差別されたりする風潮も各国にあり、買い物に出ても人通りがないので非常に警戒して、周囲の人と少し距離を置いてしまった。

一人暮らしで困っている人や不安にさいなまれていた人も多いので、もっと励まし合っていたらよかった、と今なら思う。

帰国までには、これまでお世話になった人たちに、改めて感謝の気持ちを伝えたい。

 

後悔していること3:衛生面。潔癖症の域に入りたい

 

夏になり、近所がにぎやかになったり人とのかかわり方が変わってくると、自分の気持ちもふと緩んでしまう。

買い物に行って必要以上に商品に触れてしまったり、手洗いの時間が短くなってしまったり、家の掃除が甘くなってしまったり…

もとから潔癖症とはかけ離れた雑な性格なので、これを機会に直していきたいなと毎日思い、そして忘れ、反省してまたうっかり...を繰り返している。

 

反省は多いけれど…

 

反省は多いけれど、やっぱり、これまでのロックダウンの経験を大切にしたいと改めて思います。

もう一度書きます。

私はこの3か月間を、それでも自分なりに有意義に使ったと自負しています。

2020年の冬からこの夏にかけては、多くの方が亡くなり、本当に不安で悲しく恐ろしい期間ですが、それでも、この期間は私にとって、私がイギリスという土地で生きた、私の人生の「なんびゃくぶんのいち」を占める貴重な時間です。

かけがえのない、私にしか作れなかった大切な時間だと信じています。

 

 

今後のブログの方針について

 

ブログについては、タイトルを変えカテゴリーを整理して、今後も続けていく予定です。

内容は、まだ書ききれていないイギリスのことや、自分が気になったトピックを国内外かかわらず発信したいと思います。

独り言のように始まり、細々と更新しているブログですが、こうしてたくさんの方に読んでいただけるようになり、非常に励みになっています。

どうぞ、今後ともよろしくお願い申し上げます。