イギリスでも、黙っていられません

海外駐在妻の、世界へ向けたひとりごと

山田ズーニー『おかんの昼ごはん ---親の老いと、本当のワタシと、仕事の選択 』

 

母の衰えを目の当たりにしたズーニーさんは、大人になった自分がいまだに「子ども」という位置づけ、社会的役割を持ち、それが永遠であると思っていたことに気づく。

いつかは親との別れがくると意識したその瞬間、彼女の頭の中によぎった言葉は「消春」。

 

 

私自身、親はいつまでも若い、いつまでもこの平穏な関係は続くと信じていた。

しかし、親の老いや体調の問題を目の当たりにし、いつかは別れの覚悟をしなくてはならないのだということを実感し、しかし心が追い付かない事態に陥った。

そういう立場の人は多いのではないだろうか。

 

 

山田ズーニーさんの「消春」という考えに対し、読者から多くのメールが寄せられた。

読者とズーニーさんとの意見交流をもとに、本書は進んでいく。

 

ズーニーさんへの共感とともに聞こえてくる読者の声。

「消春」を見て見ぬふりをし、後悔の残る両親とのあっけない別れを経験した人たちの声。「消春」を経て新しい季節を歩んでいる人たちの声、親は身をもって年を取っていくことを自分に教えようとしてくれているのだ、最後まで親なのだという声。

介護のために仕事を辞めるべきか否かという議論も持ち出される。

 

新型コロナの問題によって、多くの方が親や大切な人たちの存在、今ある時間について改めて考えを深めているのではないだろうか。

あるいは不安に苛まれているときではないだろうか。

本書は、私が悩んでいるときに大きな手助けをしてくれた本なので、ぜひ多くの人に手に取ってほしい。