イギリスでも、黙っていられません

海外駐在妻の、世界へ向けたひとりごと

イギリスロックダウン15日目 世界各地の人たちの、ロックダウンとの向き合い方

 

イギリスのロックダウンも15日目。

ZOOMのオンラインミーティングや友人との電話で、いくつかのコミュニティの人たちと情報交換をし感じたことを記録する。

 

 

感謝より経済保障を…「20時に拍手」に憤る医療従事者たち

 

イギリス、フランス、そしてドイツなど、欧米諸国では医療従事者に感謝の意を表して、20時に拍手を送ろう、というアクションが起きている。

 

www.bbc.com

 

また、NHS(イギリスの国民保健サービス)で働くスタッフをサポートするために、子どもたちが虹のアートを窓に飾るムーブメントも広がっている。

www.cosmopolitan.com

 

ボランティアを募集すれば、40万人も集まるという助けあいの精神が根付いたイギリスらしい温かな取り組みだなと感じていた。

 

しかし。

 

ドイツ人の友人によると「医療従事者の中には、拍手の音が聞こえると憤る人も多い」のだそう。

「拍手よりも、保障をしっかり確立してくれ」「もっと医療従事者を増やしてくれ。疲れた」という声があがっているという。

 

医療従事者の皆さんがどんなに一生懸命働いて、身も心も消耗しているかが伝わってくる。

防護服を頻繁に着脱するため、体への負担も大きいと聞く。

 人の死を目の当たりにすることは、精神的な負担が大きい。

毎日災害が続いているような状況なのだろうか。

 

マダムは根性論がお好き?

 

2週間前にロックダウンとそれに伴う経済保障を発表し、その後新型コロナウィルスに感染したジョンソン首相。昨日は病院で治療の強化がなされたという深刻な状況となっている。

では誰が国を取りまとめるのか?とみんな困惑する状況。

そんな中、エリザベス女王が国民に呼びかけの演説を行った。

イギリスではクリスマスに女王がスピーチをするのが定例となっており、イギリス国民はそれと同様にテレビで女王のスピーチを観たことだろう。

私も耳にしたのだが、「ウィルスとの闘いにみんなで打ち勝ちましょう」という、

クリスマスのスピーチで平和を唱えたときと同様のドラマチックでエモーショナルな演説で驚いた。

これに対して、国民はどんな反応をするだろうか、と心配になった。

「それより経済保障どうにかしろ」

「根性で打ち勝てる問題ではない。なにを気楽なことを言ってるんだ」

なんて国民の声が聞こえてきそう。

 

しかし、この演説に触発されたのか、その夜からイギリスのマダムコミュニティは、前向きなメールのやりとりが再び沸き起こった。

(ロックダウンが始まったときも、マダムコミュニティは前向きな意見で沸き立った)

エリザベス女王の使った言葉と同じタイトルの曲「we’ll meet again」の動画をメールに添付して気持ちを鼓舞する姿勢が多くみられ、情熱的な励まし合いのメッセージが飛び交った。

 

www.youtube.com

 

買い物したいけど…配達員への配慮

 

日本では、経済対策のためにお金を使おう!という風潮が強く感じられる。

イギリスの場合は、現在スーパーと薬屋などを除いてすべてのお店が休業の措置を取っており、現在は嗜好品を買うことがなかなか困難になっている。

そのため、「ロックダウンが終わったらあれがしたい・これがしたい・あのお店が恋しい」という話がオンラインチャットの中で頻発する。
「その商品が欲しいならオンラインで買えるよ」と誰かが言い、

別の誰かが「だめだよ、配達員の人を不要不急で仕事させてはだめだよ。嗜好品の買い物はロックダウンが終わってからにしなきゃ」という。

 

スーパーの店員さん、スーパーのオンライン商品を届けてくれる販売員、郵便屋さん…

彼らの存在によって自分たちのロックダウン生活が成り立っている。

イギリスに住む人たちは、労働者を尊重する姿勢が強いように感じられる。

 

手を洗えない国もある

 

これはニュースで読んだことなのだが、世界には、ロックダウンしようにも不可能に近い環境もあることを知った。

手を洗う石鹸が不足している国。

収容所のような隔離施設に押し込められた感染者たち。

犯罪者のような劣悪な状況のため、逃げ出すひとが続出しているという。

家が狭いため、家族間で距離をとって暮らすことがかなわない国もある。

家族の一人が感染したら、一斉に感染するだろう。

これは日本のアパート暮らしなども同様だけれど、十分な衛生環境を確保できない国、医療制度が整わない国にとっては、より一層命にかかわる問題となる。

 

感じたこと まとめ

 

もし自分がずっと日本に住んでいたら。

日本で仕事をしていたら。

自分に子どもがいたら。

 

目の前の家族や友達を守ることばかり気にかけていたかもしれない。

自粛のストレスにしか目がいかなかったかもしれない。

仕事を失うことにおびえていたと思う。

 

ロックダウンに巻き込まれたからこそ、各国の対応と考え方の違いに
より一層衝撃を受けている。

日本からすれば信じられない数の死亡者が出る国に滞在し、本来ならもっとおびえるべきなのかもしれない。

しかし、他国の友人たちは命の危険以外にも、目の前で大変な状況に追い込まれている。

身分証を持たなければ外出も許可されない国、帰りたくても帰れない人たち、帰ったが最後、またイギリスに戻ることは困難な人たちも。

ヘイトクライムで肩身の狭い思いをしたり、身の危険を感じている人たち。

 

ある留学生は、ロックダウンが始まった数日後に泣きながら帰国した。

4月から始まる新学期を友人と過ごすことはできず、母国からオンライン授業によって残りのカリキュラムを行うことになった。

彼女は入学式のとき、とびっきりの笑顔で友人たちと何枚も写真を撮っていた。

やっと授業に慣れてきて、友人とのグループワークや飲み会、試験後には旅行など楽しい予定があふれていたはずなのに。

 

経済保障の確立が遅かったために破産してしまった大好きなお店たち。

ゴーストタウン化したわが町は、休業中の札の代わりに「移転しました」「閉店しました」の札もよく見られるようになった。

 

今見えるものだけがすべてではない。

これから、想像以上の悲しい出来事も起きるんだろうなと思うと胸が痛い。

 

前向きで希望を持ったイギリス人の姿勢を見習いたいと思いつつも、

なかなか難しいなと思い動揺する日々。