大学入試英語成績提供システム、惜しいと思う…
日本では、大学入試英語成績提供システムの見直しが話題となっている。
導入されると聞いた当初、私はそれをすごくいいことだと思った。
私が学生の頃は英語の試験といっても「点数を取るため」にセンター入試の勉強をしてばかりで、英検やIELTSの勉強にまで目がいかなかった。
しかし、もし高校時代から民間の英語試験を勉強しハイスコアをとっておけば、受け身ではなく能動的な学びになるわけだし、留学の門戸を広くすることができる(もちろん英語の試験には有効期限があったりするわけだけれど、早いうちから試験対策を始められたら、フットワークも軽くなるのではないだろうか)。
一時帰国したとき、日本に帰る飛行機の中で頼もしい小学生と高校生が両隣に座った。
小学5年生の女の子はすでに英検2級をとり、ひとりでイギリスに行ってきた帰りだと教えてくれた。堂々としていた。今時珍しく携帯も持っていないという。
高校1年生の男の子は、ひとりで母親の知り合いの家にホームステイしたという。
ゲーマーで引きこもりだと言っていたが、そうとは思えないコミュニケーション能力で小学生の女の子や私に、鋭い質問をぶつけ自分の意見を話してくれた。
使える英語を身につけた彼らの世界はどんどん広がり、実生活も豊かになっていく。
英語の民間試験は、留学時に利用することができ、海外への門戸を広げ、
また、会話やリーディングなど、実生活で使える英語の力をはぐくむ(と私は信じている。ライティングの力と、たどたどしいながらも英語で話す力をつけてくれたIELTSと英検の受検は、私に大きな自信となった)
しかし、今日本で大学入試成績提供システムについて問題になっているのは、受験料と機会均等のこと。
確かに、IELTSの受検には日本円でおよそ2万5千円もの大金がかかるし、試験会場である市街地に訪れるために高額の交通費と労力を必要とする僻地の高校生もいることになる。
(IELTSは1日がかりの試験であり、私は初めて受検したとき、あまりの大変さにめまいがした。29歳で初めての受検だったこともあり体力に問題があったのかもしれないが、この試験を遠方から受検に来る人たちの苦労はいかばかりか…)
最近IELTSは平日も受検できるようになり、お金と体力があれば何度も何度も受検できる環境がととのってきた。
しかし、お金がなかったり地方にいる人たちは、社会人であっても受検回数が少なくて志望留学先を下げざるを得ない状況が続いている。
そんな実情を鑑みると、今回の改革によって高校生の教育の機会均等が失われているようでかわいそうに思う部分もある。
でも、この制度を始めるに踏み切った文科省に、どうか中途半端で終わらないよう踏ん張ってほしいとも思う。
だって、大学受験は将来のステップの一つにすぎず、これからどんどんと不公平な環境や不平等は起きてくるのだから。
今の高校生からしたら、大きな受験転換期にぶち当たり困惑しているだろうけれど。
こういう問題は、社会に出てからも起こることだから。
日本の企業やあらゆる組織が学歴や大学名にとらわれずに人を評価する時代になるよう努力して変わっていってくれれば。
この受験方法の変化は大きな問題にはならないはず。
だから、高校生だけでなく今の政府や、私たち大人も頑張らないといけない。
これまでやってきた伝統を変革するには、受け手も主催者も大きなエネルギーが必要で、必ず混乱が生じる。
でも、入試スタイルが変わればいい刺激だってたくさんあることを忘れないでほしい。
英検は高校生の受検が多いけれど、IELTSやGMATといった試験では、いろんな世代、国籍の人と肩を並べて試験を受けることができる。
自分が触れたことのないイギリス英語とアメリカ英語の違い、オーストラリア英語のなまりや単語の違いに気づかされる。
変化の時代を生きる高校生たち、どうかこの混乱を尻目に、いろんな試験のスタイルを体験し、社会人や他国籍の人たちが英語に取り組む姿勢に目を向けて、世界の広さを実感してほしい。
お金がないとそんなの無理だよって思う人もいるだろう。
でも、世界には、奨学金を利用して留学している人もたくさんいる。
私の友達も、お金がないし持病に苦しみながらもフランス留学を決行し周りを驚かせた。
豪華なパーティーには出席できず、アルバイトをしながらだけど、とても楽しそうに学んでいるケンブリッジの学生にもたくさん出会った。
親に頭を下げて借金をし、社会人になってから留学し、夏休みにはLCCを利用して貪欲に行きたい場所をめぐる30代。
試験前に「死にそうだ」と嘆きをSNSで連発しつつも、美しいイギリスの庭を眺められる図書館で勉強する学生たちの姿をたくさん見て、たくましい、かっこいいと思った。
生きる英語を手に入れて、海外の視点を実際にみて感じて、考える若者が
いっぱい増えたらいいな。
イギリスで生活しながら、そんなことを考えている。