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海外駐在妻の、世界へ向けたひとりごと

野中広務・辛淑玉『差別と日本人』を読んで

野中広務・辛淑玉『差別と日本人』角川書店2009年6月

差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100)

差別と日本人 (角川oneテーマ21 A 100)

部落出身者として被差別者であり、差別問題解決に向けて行動した元衆議院議員野中広務の等身大の言葉を、人材育成コンサルタントの辛淑玉が上手に引き出している。

 

現在31歳の私は、部落差別と聞いてもピンとこない。

覚えているのは、小学生のころに社会科や道徳の先生が、「昔は部落差別というものがあった。住む地域によって差別される人がいたんだよ」と教えてくれたこと。

どんな地域がどういう理由で差別されているのか知りたかったのに、先生は詳細を教えてくれなかった。きっと、今も残る部落差別や先入観を、子どもたちに引き継ぎたくなかったのだろう。

 

野中広務は、部落差別を解決するために、出身地である元部落地域の首長となった。

その当時、政府が部落解放のために施策をした。これにより、町民には仕事ができ、お金がはいってくるようになった。

しかし、野中広務は「それではだめだ」と、町民に「学ぶこと」「努力すること」を推奨する。自分の後輩たちを夜間学校に行かせたり、自身の後輩として仕事を教えた。

そんな野中の奮闘ぶりが等身大の言葉で語られ、決して自慢げではない。

 

差別のトピックはどんどん広がる。

野中広務が議員だったころの自民党の様子、野中広務が語る議員や官僚の人柄、アメリカ、アジアの歴史的な背景とそこから起こる問題…

 

辛淑玉との対談方式なので、ときには脈絡がなく話が飛び、少し読みにくい印象がある。

しかし、辛淑玉の鋭い質問から、野中広務は一人の人間として、等身大の言葉で自分の意見を語っている。飾らず、主観的な発言も多い。

社会の問題意識や政治家が、一気に自分の身近なものに感じられた1冊だった。

 

右翼左翼の二元論ではなく、ふたりの人間の視点をもとに歴史観をたどるのも悪くない。


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