イギリスでも、黙っていられません

海外駐在妻の、世界へ向けたひとりごと

イギリスの学食から学ぶ「今日の献立」

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イギリスの食べ物を見ていると、どうしても「単純」という印象を持ってしまう。

ランチの時間になると、みんな毎日のようにサンドイッチを広げるし、金曜日はフィッシュアンドチップス、日曜日はローストビーフ。少ないレシピの中でまわしている印象がある。

それに比べ、日本人は三大栄養素とか、五大栄養素をもとに一日30品目食べようとか、一汁三菜にしよう、と言っている(これだから「今日の献立なんにしよう」と毎日の食事の悩みが尽きない)。

 

夫は、メニューについてうるさく言うタイプではない。
でも、やっぱり毎日違ったものを食べさせてあげたい。

朝から晩まで勉強をしている主人にとって、唯一の楽しみは食べること。

もし日本だったら、自分でおいしいスイーツやスナックを買う楽しみもある。

でも、イギリスのスイーツやスナックの選択肢は非常に少ない。

期間限定フレーバーのポテチはないし、チョコレートのお菓子といえば、

どこのスーパーも変わり映えのしないラインナップ。

 

主人はイギリスに来てから、チェリーパイとマフィン、スコーンをローテーションして食べ、スナックにいたっては、塩味のポテトチップスしか食べていない。

本人はそれを気に入って食べているのかもしれないが、日本だったらもっといろんな選択肢があるのにな、と、なんだか不憫に思えてくる。

 

日本に住んでいたころ、北浜で人気のスイーツのお店に行ったこと、
ルクアにできた有名なお店に30分も並んでシュークリームを食べたこと…

そんな出来事がはるか昔のことに思える。

 

そんな過程もあり、私は日々のごはん作りを頑張っていた(私なりに)。

夫は3食自宅で食べるので、作り甲斐がある。

 

ちょっと薄めの豚肉に玉子とパン粉を重ね付けしてとんかつを作った。
(パン粉はパンをすりおろして生パン粉を使った)

天ぷらそばを作るときには、日本らしい材料がそろわないので、鶏天とパプリカ、ズッキーニ、バターナッツスクアッシュというカボチャを使って色とりどりの天ぷらを揚げた。

試験当日には、消化にいいように柔らかく煮たうどんを作った。高級な料亭のだしを使った、特別おいしいうどんだった。

白菜とパプリカで浅漬けを作ったり、太巻きを作った。

イギリスでは珍しい、皮がぱりぱりのソーセージを見つけてきて朝食にした日もあった。

近所のスーパーにエリンギやもやしが売られているのを見ると、頻繁に買った。

(ケンブリッジでアジア食材が売られていることは珍しい。

たくさん買わないと、「売れない商品」と見なされて販売停止になってしまう。)

 

こうやって書いてみると、いかに日本スタイルの食事にこだわっているかがわかる。

 

おそらく、私の中で「イギリスの食事は単純」という潜在意識がぬぐえないのだろう。

 

こうしてついに、献立を考えることに疲れてしまった。

3食すべてに全力を注ぐと、こういうことになる。

 

もうなにもアイデアが浮かばない、食べ物のことを考えたくない、と主人に言うと、大学の食堂に連れて行ってくれた。

学生でなくても利用できるのがうれしい。

 

そしてここで、私の目からうろこが落ちることになる。

 

イギリスの食事は単純だと思っていた。

品数が少なければ、味付けのバリエーションも少ない。

なんてお粗末な食事、と思っていた。

 

その感想は変わらない。

しかし、なんだかすごいと思った。

「ほとんど味つけをしていないのに、野菜の種類は少ないのに、こんなに多種類のサラダを用意できるのか」というのが、感想だった。

 

すごい。

 

ニンジンとキャベツのコールスロー。(マヨの味しかしない)

パスタとオリーブとチーズのマリネ(油の味しかしない)

キヌアと玉ねぎのサラダ(玉ねぎの味だけ)

レンズ豆と人参のサラダ、ビートルートと人参のサラダ、

グリーンピースのペースト、ポテトサラダ、

ベビーリーフのミックス、レタスのサラダ、

トマトと紫キャベツを和えたもの(上記すべて、塩かオリーブオイルをかけて食べる。ドレッシングなし)

 

日本だったら、味付けを変えたり、もっとたくさんの食材を混ぜてサラダを作る。

例えば、じゃこを混ぜたり、和風サラダ、海藻サラダ、イタリアンサラダ、チキンサラダ…と、具材や味付けで勝負する。でも、イギリスは手抜き感が半端ない。

 

ものすごく感動するような味付けのものはない。

 

しかも、イギリスの野菜は新鮮ではない。地質や水も影響しているのだろうか。

トマトは全然みずみずしくないし、ゆでないと食べられないくらい硬いキャベツもある。

ナスはどんなに煮ても柔らかくならないし、玉ねぎの甘みも少ない。

スイートポテトという名前の芋は、サツマイモみたいな形をしているけれど、味はニンジン。

そんな味気ない野菜たちを、ただ切って、サラダにして並べている。

 

すべての献立に全身全霊を注いできた私は、感動した。

「素材を切るだけでいいんだ」と。

 

そんなにおいしくないけれど、久しぶりに食材の歯ごたえを感じた。

雑に切られた大きな紫玉ねぎのかたまりは、辛くて口の中をしばらく玉ねぎ臭くした。

ビートルートを初めて食べたとき、なんともよくわからない食感に違和感を持ったけれど、ニンジンと一緒に食べると、歯ごたえの違いがわかって面白かった。

キヌアやレンズ豆は、ゆでてストックしておけばシチューやカレーなどいろんなアレンジにも使えそう。

毎日1から作らなくていいんだ、とわかっただけで、なんだかうれしくなった。

 

そして、これらの生野菜サラダは、私たちの胃袋をふくれさせた。

 

私と夫は、人以上にお米を食べる。

1食3合食べてしまうことも。

そして肉のメイン、スープ、添え物とさらに魚を使った一品を食べる。

そんな品数を増やし、味付けのバリエーションも幅広くしていたのに、
腹持ちが悪かった。

煮物にしたり、手をかけて柔らかくするからだろうか。

 

でも、イギリスのこの単純なサラダは、腹持ちがいいために満足感が大きかった。

「たったこれだけのことでいいんだ」と、私はショックを受けた。

 

今日、私は味付けをまったくしないニンジンとジャガイモをテーブルに出した。

塩は、ドライオニオンやハーブの入ったものを使うと、味に深みが得た。

献立を考える手間が省け、心が軽くなった。

 

お惣菜(ready to eat)の少ないわが町、ケンブリッジ。

(ちょっとは売ってるけど、高いし味に疑問がある)

手抜きしたいときは、食材を切ってそのままサラダにしてしまえばいい。

 芋と人参をゆでればいい。

 

日本人は、食べることに頭を悩ましすぎているのかもしれない。

 

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