イギリスでも、黙っていられません

海外駐在妻の、世界へ向けたひとりごと

プラスチックごみに対する意識の違い ヨーロッパと日本

プラスチックごみに対するイギリスの取り組みを最近よく目にする。

すごいなと思う反面、疑問に思うこともある。

 

イギリスのプラスチック製品事情

 

お店編

 

イギリスのスーパーで驚いたのは、エコバッグの浸透率。老若男女、大半の人がエコバッグを持っている。過去に購入したと思われるボロボロのレジ袋を何度も使ってエコを実践している(?)おじさんもよく見かける。

 

また、イギリスで広く展開しているドラッグストア「ブーツ」では、処方箋薬をビニール袋に入れて渡していたのだが、世論にひどくバッシングされているという記事を読んだ。

「薬を持ち運ぶだけなのだから、紙袋でいいではないか」という客からのクレームに対し、店側は「日光を避けなければいけない薬などもあり、ビニール製にした」と弁解していたが、世論の勢いがあまりにもすごかった様子。これは、日本にはない現象だなと驚いた。

 

乾物の食品梱包も、プラスチック製のものを控える姿勢がある。

箱に入ったお米を買ったら、プラスチック製の中袋はなく紙の箱に直接入れられていた。(紙の箱が濡れたらどうするんだ!)

砂糖や小麦粉は紙の包み1枚のため、袋が破けて店の棚が粉まみれになっている場面を何度も見た。

…食べ物の衛生管理・品質保持のためには、プラスチックをけちらないでほしい。

 

一方で魚・肉類の包みは結構しっかりしている。分厚いプラスチックの真空パックだったり、肉の塊をすっぽり包む大きめの容器が使われている。日本式の発泡スチロールトレイとサランラップの包装と比較すると、かなり頑丈な気がする。

 

家庭編

 

家庭ごみの大半は、リサイクル不可のごみ(general waste)とリサイクルに分けられる。

そして、日本と大きく違うのは、リサイクル資源を細かく分別しなくていいこと。

リサイクルのごみ回収ボックスには、いろんな素材が混じって捨てられている。古紙、プラスチック、アルミ、ガラス…

日本のように素材ごとに分ける必要はない。ポテチの袋も、食べ物の油や汁がこびりついたプラスチック容器もいっしょくたになって捨てられている。ビニール袋にまとめずじかに捨てている人も多い。

管理人のトムに聞いたところ、リサイクルごみは処理場でロボットによって分別されるのだという。

…分別作業だけでも大変そう。汚れたプラスチックは、各家庭で洗ってごみ出しした方が効率的なのでは?

個人個人で分別したほうがいいのでは?

 

衛生面のジレンマ

 

エコの精神でプラスチックを減らそうとするイギリスの制度やイギリス人の意識の高さはすごいと思うし、日本も大いに見習うべきだと思うのは事実。

でも、私はイギリスの衛生面をすごくすごく、不安に思う。

汚れたプラスチック製品が平気でリサイクルボックスにつっこまれる。

薄くて質の悪いビニール袋が簡単に破け、汚物のにおいと液体があふれる。

マンション共有のごみバケツのふたを開けると虫が一斉に飛び出てくる。泣きそうになる。息を止めてごみを捨てる。ごみバケツを開けた自分の手が汚くて気になる。自室に戻るまでに何枚ものドアやエレベーターのボタンに触れなくてはならないのに。

このときばかりは、イギリスのエコ活動についても批判したくなる。

なにがエコだ。エコのことばかり考えて衛生の質を落とし感染症になってもいいの?

こんな汚いプラスチック製品を、古紙やガラスと一緒にリサイクルで集め、一体どんなリサイクルができるというの?


一方の日本はプラスチック製品が多く出回り、ビニール袋やサランラップの素材の質が高い。エコとしては問題ありだけれど、このプラスチック製品によって日本の衛生管理は成り立っているんだなと改めて実感する。

 

私個人としては、スーパーではいつもエコバッグを使い、ごみはなるべくリサイクルに回すよう努力している。
しかし、一定の衛生基準を保つためにビニール袋を50枚単位で購入してごみ袋として利用している。

食品保存にジップロックやサランラップを必要以上に使っている。
薬や商品のパッケージは、保存のために頑丈なプラスチックでできている。

便利な暮らしはなかなか手放せず、結局プラスチック製品の消費量は変わらないような気がする。
日本人にとって、私にとって、エコの実践は想像以上に難しいのでは?

 

世界のプラスチック事情

 

世界では年間4億トンものプラスチックが作られていて、これは70年前の200倍に相当するという。

プラスチックごみは、海に沈むと紫外線や熱の影響を受けないため何世紀にもわたって存在し続ける可能性があるという。そして、それを食べた海洋生物は実際に大きな被害を受けている。

WWFによると、少なくとも700種類もの海洋生物が誤飲などさまざまな被害を受けている。ウミガメの52パーセント、海鳥の90パーセントがプラスチックを誤飲している。

プラスチックは消化されずに胃袋の中にとどまり続け、海洋生物に満腹だと勘違いさせる。そのせいで食事をとらずに餓死してしまう動物がたくさんいる。

 

この事実を考えると胸が痛い。

やはり自分の衛生基準を下げてでも、我慢してでもプラスチック製品を使わないようにするべきなのだろうか。

 

日本の弁解とエコの矛盾

 

日本は使い捨て文化が根強いけれど、日本政府はプラスチックごみの86パーセントを有効利用していると主張している。

これを聞いたときはほっとしたものの、実はこれ、リサイクルではないのだそうだ。

政府の言う「有効利用」とは、サーマルリサイクルというもの。これは、プラスチックごみを燃やし、その熱を発電や産業に再利用する処理のこと。製品や原料としてリサイクルされるのは14パーセント。世界平均は20パーセントなので、先進国としては少ない。

 

さらに、日本は年間150万トンものプラスチックごみを「リサイクル用原料」として中国に押し付けていたけれど、中国も去年から禁輸措置をとり、日本のプラスチックごみが行き場を失っている。

 

今の私にできること

 

普段つかっている消耗品の量は、簡単には減らせそうにない。

じゃあなにができるかなというところで、私がひとつ実践しているのは「買い物の回数を減らす」こと。

必要な量しか買わないようにすることで、無駄なものを買ってプラスチック製品の消費を増やさないようにしている。

ネット通販の利用が減れば、梱包材も少なくてすむ。

 

もっともっとできることはたくさんあるはずなんだけれど、そんなにまじめな性格ではないので。ずぼらな私でも継続していける取り組みがいいんだろうなと思い、今、そんなことから始めている。