イギリスでも、黙っていられません

海外駐在妻の、世界へ向けたひとりごと

これから始まる軽減税率。イギリスと比較してみる

私は英語が得意でないので、毎日イギリスの新聞を読むことができない。

日本のニュースだって、そんなにしっかりとチェックしない。

だからここに書くことは、私がイギリスに住んでいて感じたことと、日本の新制度を照らし合わせた雑感にすぎない。

 

でも、考えれば考えるほど、「日本は軽減税率取り入れない方がいいのでは」と思えてくる。

 

日本で導入される軽減税率

 

今年の10月1日から消費税が増税し、それとともに軽減税率の制度が始まる。

低所得者の負担を緩和するために導入するらしいが、始まる前からてんやわんや。

ニュースでは、酒屋のおじいちゃんが「(軽減税率導入により)1人のお会計にかかる時間が1分長くなる」と言っていた。

軽減税率対象外となるお酒と軽減税率対象のジュース。税額が違うのでその分多く電卓をたたかないといけない。

大きなお店となればレジを買い替えないといけないし、商品の税込金額をすべて書き換えないといけない。

 

外食サービスの種類が豊富な日本だと、税率があいまいな場面は頻発することだろう。

 

これらのことは毎日のようにニュースや新聞で騒がれている。

 

そして問題は、軽減税率をしても「たかが2パーセントの違い」ということ。

大雑把な私のように、税率を気にせず買い物をする人は多いのではないだろうか。

お店で食べずにテイクアウトすれば2パーセント安くなると言われても、あまりそそられない。それに、持ち帰り容器などプラスチックごみが増えて環境にやさしくない。

 

 

イギリスの軽減税率

 

では、イギリスの場合は?

2011年から軽減税率の制度を取り入れているイギリス。

消費者の私からすると「すごくありがたい」。

食料品はゼロ税率(対象外の食品ももちろんたくさんあるけれど)。

ニンジンやジャガイモは1キロで150円くらいだし、食パンは日本の半額くらい(ただしふわふわじゃない)。ケーキやビスケットもゼロ税率。

家で調理をすれば、惣菜を買うよりも全然安く、節約の達成感がある。

外食すれば20パーセントの付加価値税(VAT)がかかるのに、テイクアウトにすればこれもゼロ税率。

だからイギリスでは、歩きながら食べる人が多いのか!と納得。

 

 

もちろんいいことばかりじゃない。
軽減税率導入当初は混乱し、テイクアウトか否かをめぐって政府と店がトラブルになることもあったという。

 

日本はどこへ向かっているのか

 

多くの移民を受け入れるために柔軟な(ぐだぐだな?)措置をとっているイギリスだって、軽減税率を導入するときは苦戦した。

世界に誇るサービス精神を持つ日本、秩序を大切にする日本ならなおさら、複雑な問題が頻発することになるだろう。

 

しかも、低所得者のためとか言っているけれど、実際に軽減税率の恩恵が大きいのは高所得者(高価な食べ物を購入する人)の方だと思う。

1000円の買い物をした低所得者の恩恵は20円なのに、10000円の買い物をした高所得者は200円の恩恵を受ける。

これが本当に、低所得者を助ける制度なのだろうか。

 

それなら、フランスのように自国の産業を守るために軽減税率を取り入れるようにしたらどうだろう。

フランスは、自国で生産が盛んなトリュフやフォアグラ、バターを軽減税率の対象にしているのに、輸入が多いキャビアやマーガリンは対象外としている。

 

こうやって日本の産業を活性化させたり、備蓄米を減らすことだってできたはず。

 

もっと内容を吟味してから軽減税率を導入するべきだったと思う。

ただでさえ労働者が不足しているのに、こんなに会計手続きを煩雑にして、どうするつもりだろう。
そして、増税は日本の財政にどれほどの影響を与えることができるのだろう。

 

イギリスと日本の違い

 

イギリスはリーマンショックのときに付加価値税(VAT)を減税して景気悪化を阻止することに成功した(もちろん減税だけでなく、量的緩和のおかげもあるとは思うけれど)。

でも、日本で同じように減税したら、景気って回復するかなー?と疑問に思う。

一般庶民の私だからかもしれないけれど、税金が安くなったからといって、「よし、じゃあ車買うか」とはならない。

「これから値上がりするよ」と言われて追い込まれるからこそ、「じゃあ、安い今のうちに買っといた方がいいな」と踏み切れる。これって、私だけ?日本人の特性なのでは?

 

日本人は安さを美徳とする傾向があり、タイムセールとか、「今だけ!」「お得」という言葉に刺激されて消費することが多いように思う。

一方でイギリスの人は、自分がいいと思ったものならお金を気にせずに購入するし、行きつけのスーパーマーケットのブランドにプライドを持っている。

こういう特性の違いを見るにつけても、「海外の成功した制度を採り入れれば必ず成功する」わけではないことは一目瞭然。

 

環境問題に対する意識や、食肉に対する意識の違いだって経済に大きな影響がある。

そういう違いや、日本の特性、歴史的な経済動向を踏まえて制度を作るべきだったのに。