イギリスでも、黙っていられません

海外駐在妻の、世界へ向けたひとりごと

イギリスで食器を漂白する

ケンブリッジの水は、カルシウムを豊富に含む。

体にはいいのだろうけれど、心なしか汚れが落ちにくい印象がある。

とくに茶渋がなかなか落ちない。

 

さらに残念なことに、イギリスには食器用の漂白剤が存在しない。

お隣の奥さんに「ブリーチを探しているんです」と相談すると、なぜか衣類の漂白剤の話になってしまった。

「食器の茶渋を落としたいのだ」と訂正すると、食洗器を使うことを薦められた。

しかしわが家に食洗器はない。

 

ドラッグストア、ホームセンターで漂白剤(ブリーチ)が欲しいと相談した。

すると、やはりここでも洗濯用の漂白剤が出された。

困った私が見つけたのは、赤ちゃんの哺乳瓶の消毒薬だった。

日本の漂白剤よりも薄いけれど、ちゃんと塩素のにおいがする。

これはばっちり茶渋を落としてくれた。

そして、プラスチックのまな板に染みついたニンジンの色を取り除いてくれた。

 

ケンブリッジの田舎町で、漂白剤を探し購入するのは大変なことだった。

 

私「あのー、哺乳瓶の漂白をする液体を探しているんです」

店員「ああ、これね」

私「ありがとうございます。カップに残ったコーヒーの染みを落とすのに、これが便利なんです」

店員「あら、それなら1階の食器洗剤コーナーに…これは哺乳瓶を消毒するためのものだから食器には使わないのよ」(と言いながら、消毒薬を棚に戻し始める)

 

このとき、私はすでに1階の店員に茶渋落としの漂白剤について相談をしていた。

そして、店員は「うちにはそういうものは置いていない」と首を振った。

ここで引き下がったら、一生漂白剤を手に入れることはできない。

 

私「…いえ、哺乳瓶の洗浄もしたいので、これが必要なんです!」

 

嘘をついてしまった…私は子どもがいない。

哺乳瓶を洗浄したいなんて真っ赤な嘘だ。

しかし、嘘をついてでもすぐに買わないと後悔する。

イギリスの商品はいつの間にか販売中止になって手に入らなくなるからだ。

 

こうしてやっと購入できた哺乳瓶の漂白剤を抱え、私は次の行先へ向かった。

 

ケンブリッジの町は狭いのだけれど、一つの店ですべての買い物を終えることができない。

食料品はこの店、でも肉はここで、野菜はあっちが安くて…

トイレットペーパーや日用品はセイバーズが安い、電化製品はあっちの町まで行かなきゃ、

薬やビタミン剤はそっちの通り…

 

こうしていろんな店をうろうろして、あっという間に時間が経ってしまう。

 

アマゾンを使って購入するという方法もある。しかし、イギリスの宅配は信頼度が低い。

お届け予定日時がまったく異なって届く場合が多いし、不在票すら入れてもらえないこともある。

電化製品を家の前に置いていかれ、誰かが持って行ってしまったケースもあるという。

 

だから私は、自分で買いに行くようにしている。

 

そんなこんなでやっと手に入れた漂白剤。

イギリスでティーカップを漂白したときは、なんだかものすごくうれしかった。

たかがそんなことで…

 

でも、駐在生活では、ささいなことの積み重ねが、自分の経験値になる。

英語で店員さんやご近所さんに相談したり、漂白剤や茶渋を落とす成分を調べてみたり、近所のお店を巡ったり。

机で勉強した英語とは違うなにかが、自分の経験となり、自信につながる。

 

そんな日々の積み重ねも、悪くない。