イギリスでも、黙っていられません

海外駐在妻の、世界へ向けたひとりごと

合格率15%の英検準1級 合格のために私がやったこと

 

なぜ英検だったのか

 

 

数年前、まだ主人と結婚をしていなかったころの話。

ややこしくなるので、この記事では主人のことを、「彼」と呼ぶ。

 

彼は私に、「将来イギリスに留学したいんだけど。一緒に来る?」と聞いてきた。

私は、「わ、行きたい!」となにも考えず、喜んで返事をした。

楽しそう、という気持ちとともに、彼が私と今後も一緒にいたいと思ってくれていたことがうれしかった。

また、これまで経験したことのない気持ちを感じた。

この人は、一緒にいても私に依存しすぎないし、私も彼に依存せずにいられる。

そんな確信だった。

 

彼は優秀だけれど、自分のやりたいことが第一優先となるので、私はしょっちゅう忘れ去られていた。

だから、よくも悪くも、私は自分でできることを増やし、たくましく成長していかねばならないと感じた。

その生き方は、私が求めていた生き方だった。

 

こうして、私は英語を勉強することを決意した。

 

いよいよ勉強スタート IELTS撃沈

 

さっそく英会話教室を探し、週1で通った。

同時並行で英検2級を受検し、合格した。

当時は仕事をしていたから、合間を縫ってマイペースに英語の勉強をつづけた。

 

嫌というほど勉強したのは、彼のイギリス留学1年半前のことだった。

 

その当時、彼も英語に苦戦していた。

日々努力の人なのに、珍しく弱音が出た。

「君も僕と同じ試験を受けてみたら?僕の気持ちが少しわかると思う」。

彼は、希望の大学に入学するために、IELTSという試験を受けていた。

これはイギリスに留学する人がかならず通る道だった。

リーディング、ライティング、リスニング、そしてスピーキング。

留学経験も海外生活の経験もない彼は、4技能すべてでハイスコアをとるのに非常に苦労していた。

 

彼がどんな勉強をしているのか興味あり、私もIELTSの勉強を始めてみた。

そして気づいたのだ。私は、英語の文章が読めない。

ひっかけ問題にことごとくひっかかり、点数を落とす。

高校生のころにトレーニングして築いてきた英語力と、今の私の実力は全然違う。

ちゃんと基礎から勉強しないとだめだ。

 

悔しくて泣いたのは何年ぶりだろう。

仕事で悔しい思いをして、ベッドで一人泣くことはあった。

でも、人前で泣き、助けを求めたのは久しぶりのことだった。

当時彼とは遠距離恋愛だったので、私は英語ができない旨を電話で話した。

そして気づけば電話口で大泣きしていた。

彼と付き合って4年目。こんなに泣く私を見るのはきっと初めてだろう。

しばらくして落ち着いた私は、イギリス生まれのIELTSではなく、日本生まれの検定試験、英検に立ち返ることを決断した。

こうして、英検準1級を目指すことになる。

 

英検準1級の学習

 

仕事を辞めた私には、英検受検まであと2か月半の学習時間が残されていた。

その期間、私はこんなスケジュールで英語の勉強に時間を費やした。

 

朝9時から、寝ぼけたまま過去問をテスト形式で取り組む。1時間半、きっちりはかる。

採点と軽い見直しをしてから昼食。

午後、間違えたところを丁寧に見直し。

知らなかった単語を暗記・作文の練習をしているとあっという間におやつの時間。

おやつを食べてダラダラしながらも英文を読んだり発音練習をしているうちに夕飯になる。

夕飯後、21時から23時まで、英作文の練習をする。

最近は英語漬けの毎日だと彼に話すと、「よくそんなに集中力が続くね」と言われた。

偏差値の高い人はもっと効率的に勉強しているのだろう。

 

話を聞いてみると、彼の勉強時間は1日2時間。私からしてみれば、仕事を終えて帰宅してから2時間集中することの方が大変そう。

しかも、その短い学習時間で、期限までにIELTSの目標スコアをとらないといけないのだ。

毎日続けることが、伸びる人の習慣なのだろう。

 

残念ながら私の勉強法は、点数アップにつながらなかった。

私は英検を甘く見ていた。英検の受検勉強というのは、IELTSよりも楽に思えたからだ。過去問や対策本がそろっていて、それに取り組んでいるだけで「勉強している」「はかどっている」という気分になっていた。

見直しをしているつもりでいたけれど、見直したことが身に着かないまま過ごしていた。

 

このことに気づいたのは、2冊目の過去問題集を終わらせてたときだった。

模擬試験をやってみたものの、合格点にはほど遠い。

試験まで2か月をきった8月のことだった。

 

点数が取れないのはなぜ?

原因究明に取り掛かる。

 

点数が取れない原因

 

まず、自分はボキャ貧であることが判明した。

ボキャ貧、つまり、ボキャブラリー(語彙)が貧困。

これまで、私は過去問しかやっていなかったので、極端に語彙力がなかった。

評判のいい単語帳を買い込み、印をつけたりボロボロになるまで握りしめて単語を覚えこんだ。運転中にCDを聞き、単語を頭に叩き込んだ。

 

次に、リーディングを強化する。

文章を読む速さを身につけようと、速読の練習をした。

兄が昔使っていたZ会の長文速読問題集を時間内に読み、内容を把握する訓練をしたり、河合塾の出している「出る350」という長文問題集をやりこんで、長文の力をつけようとした。

このときにもっと根本的に文法の対策をしておけばよかったと後悔が残る。

単語量だけ増やして、話の筋を勝手に推察して読んでいるだけだから、やっぱり点数は伸びなかった。

 

頼みの綱となる、ライティング

 

そして、速読の勉強と並行して、ライティング(英作文)の勉強を本格的に始めた。

決められたテーマについて、自分の意見を述べる。

それはとても楽しい作業だった。

アイデアならたくさん思い浮かんできた。

なにより、英作文は孤独にならないから、うれしかった。

書き連ねた文章を写真に撮り、彼に送って添削してもらったのだ。

英語教室の先生にも読んでもらった。

(この先生は、採点をしなかった。しかし議論が大好きな先生だったので、意見をぶつけ合い、私の意見に一貫性がないと厳しく批判してくれた。)

 

スピーキングは筆記試験をクリアしたあとの2次試験の科目なので、まだ対策をせずにいた。

 

このとき私が「やってよかった」と感じたのは、自分の得意分野(ライティング)を見つけ、早いうちに対策をしたことだと思う。

英検は、ここ5年のうちに得点配分が大きく変わった。

これまではリーディングの得点配分が大きく、読むことが得意な日本人に有利だった。

しかし現在は、リーディング・リスニング・リスニング、ライティングの得点配分が同じになり、すべての項目でバランスよく点数を取ることが求められるようになった。

私はライティングのコツをネットで調べ、定型文のつくり方を学び、テーマによってどんな語彙を使えばいいのか頭の中にまとめた。

 

リスニングは、日常会話に役に立った

 

リスニング対策は、過去問をやることと、模擬テストのCDを車の中で聴くことしかしなかった。しかし、聴くときは聞き流しではなくシャドーイングをするよう心掛けた。

音声にかぶせるように自分も同じ内容をしゃべるというやつだ。

このやり方は、渡英したあとの日常会話で役に立った。

覚えたフレーズが私を助けてくれた。

たとえば、「それは私のミスではない。あなた方に非があるのにどうして私がそんなことをしなければいけないの?」と、お店で強気でクレームを言ったり、感情をこめてお礼が言えたり。

 

いよいよ試験本番! 

 

試験当日、私のコンディションは最悪だった。夏風邪だと思っていた微熱と腹痛の正体は、なんと虫垂炎だとのちに判明する。

盲腸を抱えての受検は、困難きわまりなかった。

微熱と腹痛を引きずりながら変な汗をかきつつ、開始すぐにライティングの問題から始めた。

ライティングは私の得点源だ。

満点を取る勢いで、時間をかけて取り組むつもりでいた。

次にリーディング。

このとき、時間配分を間違えてあせった。

時間がたりないけれど、とにかく落ち着こう。

分からなくて混乱したら、すぐに別の問題にうつり、一度頭を冷やすようにした。

悪循環のまま進めると、できる問題もできなくなってしまう。

 

大人になったら、頭を使い方が変わってくる。

英語の技術のみならず、論理的・常識的な話の流れを踏まえて、問題の答えを推測する。

これにより、意外と答えが導き出せる。

 

リスニングは、これまでの模擬テストで問題傾向を把握していた。

だから、途中でわからなくなってもあせらずに済んだ。

一番簡単とされる大問1が意外と難しかったので、受験者があせっている様子が感じられた。でも、私はそれをいいことととらえた。

私もわからなかったけど、みんなにも難しかったんだ。それなら、頭を次に切り替えて次の問題で点数をとっていこう。

 

微熱と緊張で脂汗をかきながら終えたテスト。

やっと試験を終えたすがすがしさはあったものの、てごたえは皆無だった。

自信があるのはライティングだけだった。

 

しかし、私は一次試験を越えることができるという妙な自信があった。

英検準1級の合格率は15パーセントと言われていた。

参加者のなかにはボロボロの単語帳を握りしめたつわものもいた。

それなのに、数か月しか勉強していないアラサーの私は、なぜか合格できると信じていたし、なんと合格してしまった。

 

合格してよかったこと・よくなかったこと

 

 合格してよかったことは、得意不得意がはっきりしたことだった。

私は英作文が得意なので、複雑なお願いごとや相談、お礼のメッセージなどを

メールや手紙で伝えるよう心掛けた。

このせいでスピーキングの力が伸びるまでに時間がかかってしまったが、

「伝わらないもどかしさ」を脱することができたし、伝えたいフレーズを頭に入れることができた。

 

それから、試験勉強で覚えてた難しい英単語たちは、私の生活を助けてくれた。

単語を1つ知っているかいないかで、理解力はぐっと変わってくる。

 

合格してよくなかったこともある。

それは、英語の学習のモチベーションが落ちてしまったこと。

 

合格したあと、私はしばらく英語の学習をお休みにした。

試験勉強は私にとって「義務」や「負担」のように感じられてしまい、

英語を学ぶことが嫌になってしまった。

もちろんその後、たくさんの友達と出会いいろんな意見を交換したり、

英語の記事を読むことで新しい世界を知ることができ、

また純粋に英語を学ぶ楽しさに気づくことができたのだけれど、それまで時間がかかってしまった。

 

試験勉強は目的ではない、ということに改めて気づかされた。